第48章 Marry ☆
居間には父、そして千速がお茶をしているところだった。
「おー。陣平。いらっしゃい」
「千速もいんのかよ…」
「なんだ?いちゃ悪いのかよ。」
心の声を抑える余裕もなく漏らした俺にそう返して来た千速だが、俺の様子を見て何かを察したらしい。
ふふん。と悟ったように笑うとリビングに俺とミコト、両親を残し、すぐ隣のダイニングのテーブルに座ると俺たちを遠くから観戦する方に切り替えた。
緊張感が走る中、俺はガバッと頭を下げながら言う。
「ミコトさんが大学を卒業する来年の春、ミコトさんと結婚させてください」
「お願いします!」
ミコトも俺と一緒に頭を下げた。
ミコトの両親からはうんともすんとも反応が見られず、せっかちな俺はペラペラと話しを膨らませようとする。
「っ…突然押しかけてこんなこと言い出すのは、困惑させると分かっています!けど俺は…」
「…松田くん」
「っはい!」
話の途中で名前を呼ばれた俺は、下げていた頭をガバッと勢いよく上げてミコトの父を見た。
「今更かい??」
「っ…はい?!」
「同棲をOKした時点で、結婚も許した気になっていたよ」
「はい????」
ケロッとした顔で言う萩原父。
その横の萩原母を見ると、そうねえ。今更ね。なんて言いながら父親とおんなじ顔をして俺を眺めてた。
そして俺の隣ではミコトがあははと笑いながら、
「だよねぇ?陣平くんが張り切ってるから見守ってたけど」
なんて言っている。
デジャヴだ。この俺だけがバカみてえに緊張して震えてビビっていたのに、萩原家は全員カラカラ笑っているこの感じ。
ひたすらに緊張していた俺は、へなへなと一気に力が抜けた。
「人生で1番緊張してたってのによ…」
ここに萩がいたら、きっと一緒になってケタケタ笑いながら「陣平ちゃーんはりきってて可愛いじゃんー?」などと言うんだろう。
どっと力が抜けて大きなため息を吐いた俺の背中を、千速は心底楽しそうにバシバシと叩きながら笑う。
「ってことは、来年には陣平は私の弟になるってことか?」
「千速が姉かよ」
「いいだろ?お姉様と呼べよな!」