第48章 Marry ☆
松田side
ミコトにプロポーズをしてからしばらく経った今日。
ようやく俺の休みとミコトの時間が合い、今俺はミコトと一緒に萩原と書かれた表札の前にいる。
萩が生きていた頃から、そしてミコトと付き合ってからも何度も訪れたこの場所だが、今日は今までで1番ビビってる。
以前、同棲を始める前に挨拶に来たときよりももっとだ。
そんな俺をよそに、ミコトはこの上なく軽いノリで俺の腕を引いた。
「じゃ、行こっか」
「待て待て待て。心の準備させろ!」
「えぇー?家の前で躊躇してても何も変わんないよ?」
こいつは自分の家だと思って平然としやがって…
まあけど、ミコトの言うとおりだ。
ここでグズグズしていても、今日ミコトの両親はに結婚の承諾を得るというミッションが消えるわけでもない。
俺は自分の両頬をパンパンと2回叩いて気合いを入れると
「よし。行くか」
と、まるで戦に出るかのような面持ちで敷地内に足を踏み入れた。
そんな俺とは対照的に、ミコトはいつも通り実家に帰宅するかの如く玄関ドアを開けた。
「ただいまー!」
「はーい。あら、ミコト。それに松田くんも」
「ご無沙汰してます」
出迎えに顔を見せた萩原母に礼をすると再び緊張が襲ってくる。
同棲させてくれと頼みに来た時も緊張したが、今日はそれより更に手汗がやべえ。
「どうぞあがって?お父さんもリビングにいるわよ。
あ、研二にお線香あげる?」
「いや。今日はご両親にお話があって来ました」
悪いな萩。
オメーへ線香を手向けるのは後だ。後。
でないと考えて来たセリフ全部吹っ飛んじまう。
心の中で萩にそう断り、俺はリビングに足を踏み入れた。