第6章 もしも命が描けたら
泣きそうになりながらそう縋るわたしに、陣平くんは電話越しに優しく笑いながら言った。
「本当だ。心配すんな。
…ミコト。
今度の日曜日、会えるか?」
「うん。息抜きに半日程度なら会えるよ?
どうしたの?」
「話があるんだ」
改まってそんなことを言う陣平くんは珍しい。
陣平くんが真剣な声で言う分、わたしは逆に少し笑いながら返した。
「なに?今言ってよー!」
「日曜日のお楽しみだ。
…また、美味いもんでも作ってくれよ。
あ、ヤベ。今から捜査会議だ。
じゃあな、ミコト」
陣平くんは、慌てて電話を切った。
今になって後悔しているのは、どうしてもっと陣平くんに好きだと伝えなかったのか。
あなたがいなくなったら、わたしがどれだけ絶望するか。
陣平くんがわたしにとって、世界で一番大事だよと、伝えればよかった。
兄が死んだ時も同じことを思ったのに、全然学習していない自分に呆れる。
これが、陣平くんと話した最後の会話になるなんて、露ほども思っていたがいなかったから。