第47章 初めて想いを伝えたあの場所で ☆
真剣に彼を救う方法を考えてくれる藍沢先生。
さすが、人の命を救う仕事に従事している医師だ。
「それも考えたんですが、信じてもらえないだろうし…例え信じてもらえたとしても、彼は多分同じことをすると思うから。
自分の命を顧みず、誰かを助ける。そう言う人だから…」
「…なるほど」
「だから、11月7日、この病院に仕掛けられるであろう爆弾を見つけて、秘密裏に警察に通報する。
そしたら、陣平くんはこの病院を爆発から守る必要がなくなる。
それが唯一の手段だと思うんです。
…先生。お願いです。わたしに力を貸してください」
実習でこの病院の構造はある程度把握はしたけれど、広い広い院内を、1人で捜索するには限界がある。
それにもし爆弾を見つけられたとして、それを通報するときには警察と病院の責任者への報告も必要になる。
ただのボランティア学生の話なんて、真剣に取り合ってくれない。
だけど、藍沢先生が協力してくれれば…
「…わかった」
「本当ですか?!」
「その話が、本当かどうか興味があるからな。
それに、本当だとしたらこの病院にいる全ての人間が危険に晒されるってことだ。
誰1人、死なせたくない。」
「ありがとうございます!」
これまでずっと1人で、彼を救うための手段を考えて来たけれど、ようやくそれが実現する兆しが見え始めた。
病院の屋上から見下ろした街の景色を眺めながら、強く思う。
必ず、陣平くんを生かしてみせる。
もしもそれで、わたしが元の世界線に戻ることになったとしても。
陣平くんに、未来を生きる世界線を与えたい。
あの自信たっぷりの笑顔が、10年後もこの世に存在する未来を。
11月7日まで、残すところ後半年を切っていた