第47章 初めて想いを伝えたあの場所で ☆
うちの病院の屋上の一角は、ドクターヘリの着陸用ヘリポートになっている。
「うわぁ!ドクターヘリだ…!」
実は屋上に出るのが初めてなわたし。
救命実習中も、実習生がヘリに乗せてもらえるわけもなく、初めて見る生のドクターヘリに心が躍った。
「間抜けな声」
「あっ…藍沢先生!」
見ると藍沢先生がわたしをジトーっと呆れた目で見ながらコーヒーを啜っていた。
「これ、返しに来たんです。」
「あぁ。貸してたな、そういえば」
忘れていた。というような反応をしながら、わたしが差し出した論文を受け取る藍沢先生。
ちゃんと、返事しなきゃ…
そう思ったわたしは、まっすぐに彼を見ながら口を開いた。
「…先生、あの…わたし」
「知ってる」
わたしが何か言う前に、先生は何もかも見透かしたような目でわたしを見て言った。
「…まだ何も言ってません」
「先生とは付き合えません。だろ?
言われなくてもわかる」
「でも、先生の気持ちは嬉しかったです。…すごく」
フラれたと言うのに、相変わらず余裕な態度でコーヒーを啜る藍沢先生。
もともとは、わたしの憧れの医師だ。
そんな彼に好きだと言われたのだから、嬉しく無いはずがない。
その一言を聞いて、藍沢先生はフン…と笑いながら言う。
「まあ、恋愛にうつつ抜かして、試験に落ちる。なんて事無いようにと忠告しておくよ。
ボランティアなんか始めて大丈夫なのか?」
憎まれ口を叩きながらも、来週からこの病院でのボランティア活動に参加することを、少し心配してくれているようだ。
わたしは、屋上から街を見下ろしながらぽつりとつぶやいた。
「…藍沢先生。
わたし、未来から来たんです」