第47章 初めて想いを伝えたあの場所で ☆
それから数日後、長かった実習も今日で最終日。
その最終日も、あっという間に終了時刻を迎えた。
今日でこの、米花中央病院とはサヨナラ…
ではなく、来週から週に一度、小児科のボランティアに参加するためにこの病院を訪れることになっている。
すべては11月7日のため。
この病院の関係者用カードがあれば、施設内を自由に行き来でき、その日の対策も万全に出来る。
周りの先生には、試験勉強にフォーカスした方がいいのでは?と散々言われたけれど、それを押し切ってボランティアに参加することにした。
陣平くんを救うために。
この病院を実習先に選んだことで、院内の構造をかなり理解出来たし、あとは来る日までこの病院に自然に出入りできる環境を作っておく必要がある。
ボランティアはうってつけだった。
とは言え、ひとまず実習は最後になるため、ロッカーに置いてあった荷物を持って帰ろうと紙袋に詰め替えていたわたしは、その中にあった冊子を手に取った。
「これ、返さなきゃ…」
藍沢先生に借りたままの論文だ。
告白されてから、何だかんだでバタバタしていて未だ返事は出来ていない。
返すついでに、ちゃんと断らなきゃ…
そう思いながら、彼が所属する脳外科の医局へと向かった。
もしかしたらオペ入ってるかも…
そう思いながらもドアを開けて中を覗くと案の定、藍沢先生の姿は見当たらない。
キョロキョロと辺りを見渡すわたしに気づいた別の先生がわたしに話しかけてくれた。
「あれ?確かあなた…藍沢先生の実習生?」
「はい!今日が最終日で、先生に借りてたものを返したいんですけど…オペ中ですか?」
「いえ?…多分、屋上じゃないかな。
よくそこでコーヒー飲みながら休憩してるから」
「そうなんですか…わかりました。行ってみます。
ありがとうございました」
屋上にいるかも。という情報をゲットしたわたしは、ペコリと頭を下げるとその場を後にして屋上へと向かった。