第47章 初めて想いを伝えたあの場所で ☆
この海で、わたしは初めて陣平くんに好きだと言った。
その時の陣平くんの返事は、ごめん。の一言だった。
けれどそんな彼から、これ以上ない愛の言葉を聞けるなんて。
「っ…わたしでいいの?」
「バァカ。ミコトがいいんだ」
そう言って笑うと、陣平くんはわたしの手を引いて自分の腕の中に閉じ込めた。
久しぶりの陣平くんの腕の中は確かに温かくて、紛れもない現実なんだと思い知らされる。
彼の背中に腕を回すと、また涙が溢れた。
「わたしも…陣平くん以外有り得ない…
大好き。陣平くん、わたしと結婚して?」
「フッ…真似すんなよ」
いつもの調子でわたしに突っ込んだ陣平くん。
抱きしめていた身体を少し離すと、ゆっくりと顔がわたしに近づいてくる。
目をゆっくりと閉じると、彼の唇が重なった。
「…消毒」
「?消毒?」
「あの野郎の感覚、全部消してやる」
「っん…っ」
1度目は触れるだけのキス
2度目は舌を絡めた甘いキス
やっぱり、陣平くんとキスする瞬間が一番幸せで胸がぎゅっとなる。
わたしは仕返しに、陣平くんの身体をこれでもかと言うぐらい、ぎゅーーっと抱きしめた。
佐藤さんを抱きしめた時の感覚を消したくて。
「ミコト、帰ろうぜ。俺たちの家に」
「帰る。…帰ったら、もっとぎゅってしてキスしてくれる?」
「むしろ、キスじゃ終わらねえけど?」
「うん。全部したい」
「俺も」
そう言っておでこをくっつけて笑い合うと、陣平くんが「行こうぜ」と言って、指輪をつけたわたしの右手を握った。
握った陣平くんの手があったかくて、また涙が溢れた。