第46章 キスと告白と
実家に泊まって、1週間が過ぎた。
その間、陣平くんからの連絡は特に無く、わたしからも連絡はしていない。
1日連絡せずに過ぎてしまうと、もう何てきっかけを作ればいいのかわからなくなり、そのままずるずると1週間が過ぎ去った感覚だ。
仲直りしたい。
でも、なんて言えばいい?
まず、キスされてごめんなさい。
だけど、告白してきた人と変わらずバディ組んで仕事するところ見るのは辛いから嫌だ。
佐藤さんと出来るなら話さないでほしい。
こんな実現不可能なワガママしか浮かばない。
実習は相変わらず実家から通っていて、藍沢先生のことは意識的に避けてる。
もちろん、ずっと避け続けるのは無理で話すこともあるけど必要最低限にしてる。
多分、わたしが意図的にそうしてることにも先生は気付いていると思う。
「だって、あんなことされて普通にしろって言う方が無理な話でしょ…」
はぁあ…とため息を吐きながら思わず思っていることが全部音になって口からこぼれたとき、すぐ後ろから声がした。
「へえ?あんなことって?」
「だから、キス…とか。
…って!!あ、藍沢先生!!」
ハッと振り返ると、そこにいたのは藍沢先生。
病院のカフェテリアで昼食をとっていたわたしの目の前に座ってわたしの顔を覗き込んで来た。
「何でここに座ってるんですか!」
「お前が避けるからだ」
「そりゃ…避けるでしょ普通…」
気まずくて仕方ない。と顔を顰めるわたしとは対照的に、藍沢先生は平然とクールな顔してサンドイッチを口に運ぶ。
「彼氏とは、仲直りしたのか?」
「してません。誰かさんのせいで気まずいままです」
「俺のせい?」
「そりゃそうでしょ?!キスしてるところ見られたんですよ??」
この人、頭良いくせにバカなの?!と、平然とする藍沢先生を睨むわたし。
そんなわたしをよそに、先生はコーヒーを啜りながら続ける。
「誤解だとすぐに説明したんだろ?」
「…それはそうだけど、わたしにも言い分があって言い返したんです。
陣平くんだって、佐藤さんを抱きしめてたくせに!って」