第46章 キスと告白と
「好きだ。萩原」
藍沢先生がわたしを…好き?!
驚きすぎて目をまん丸に開くわたしの頬に藍沢先生の手が重なる。
え、待って。藍沢先生がわたしを好き?
え、ほんとうに?うそでしょ?
と、頭の整理がまるで追いつかないわたしに、藍沢先生は更にわたしをパニックに陥れる。
気付けば藍沢先生の顔が至近距離に合って、自分の唇に柔らかい感触を覚えた。
一瞬、何が起こっているのかわからずに数秒固まった後、
「やっ…!」
反射的に、藍沢先生の身体をグッと押し戻したわたしだけど、みるみるうちに顔が熱くなっていく。
え…今、わたし藍沢先生とキスした?!
嘘でしょ?!
と、終始パニックになるわたしの頭の中。
そしてそれに追い打ちをかけるかのように、後ろから馴染みのある声が響いた。
とんでもなく、低いトーンで。
「何やってんだよ…」
振り返るとそこにいたのは
「じんぺ…く…」
そう。わたしの愛してやまない恋人、松田陣平がわたしと藍沢先生を交互に睨んで立ち尽くしていた。
何も言わずにわたしたちを見ていたかと思えば、フッと背を向けて、その場を立ち去ろうとする彼を、わたしは慌てて追いかける。
「ま、待って!!」
呼び止めても足を止めない彼に、慌てて駆け寄ったわたしはポケットに入れられた彼の腕にしがみつくようにして捕まえた。
「待って陣平くん!ちがうの!」
「違う?俺以外の男とキスしてた。
これの何が違う?」
「っ…それは…」
陣平くんの言う通りだ。
何も違うことはない。
さっき、藍沢先生にキスされたのは紛れもない事実だから。