第46章 キスと告白と
松田side
「私、やっぱり松田くんが好き」
「好きなの」
鈍い男でお馴染みの俺でも、3度好きだと言われると流石に冗談だろ?と誤魔化すことは出来なかった。
俺は、慰めようとした一心で佐藤を抱きしめているけれど、思えばそれはとてつもなく残酷なことをしているのではないかと、パッとそれを離した。
「…悪い」
「…前も、その返事だったよね」
そう。数ヶ月前に、勢いに任せて松田くんのことが好きなのよ!と言われたあの時も、
いつもなら、はあ?!と言い返す俺だが、スンッと冷静になってごめんと一言謝った。
あの時と全く同じく、俺は今も佐藤に心の底から「悪い」と言葉が漏れた。
「彼女、いるから」
「…もしも、その子と付き合ってなかったら、OKしてくれた?」
そう聞かれたけれど、即答でYESもNOも言えなかった。
もしも、ミコトと付き合っていなかったら…
俺は佐藤に好きだと言われて、受け入れたんだろうか。
ミコトはあくまで萩原の妹で、ミコトの隣に別の誰かがいて、俺の隣には佐藤がいる。
そんな世界線が、あり得たのだろうか。
そう思いながら、ミコトの隣に俺じゃない別の男がいる姿を想像した俺。
たったそれだけで、嫉妬心がメラメラと燃え上がり、即座にその隣の男を殴りたくなる衝動に駆られた。
「無理だ…」
「え?」
「あいつと俺が付き合っていない「もしも」を、想像するだけで無理だ。」
その時点で、もしミコトと付き合っていなかったら佐藤と付き合っていたのか?という問いは答えを出す術が無くなる。
ミコトが別の男と付き合う世界線が存在する可能性があることすら、俺には耐え難い。
そのぐらい、俺はミコトが好きなんだ。
その一択しかない。