第46章 キスと告白と
佐藤さん…目を覚ましたんだ…
そう思うと同時に、離さないでと言った彼女の言葉に一気に不安が広がる。
何故なら、きっとわたしが佐藤さんの立場なら同じことを言ったから。
離さないで、そばにいて、抱きしめて、キスして
きっとそう思ったから、心がざわついた。
そんな中、佐藤さんは続けて言う。
「っ…ごめん。実は…ちょっと怖かったのよね…
撃たれて意識を失うとき、あぁ。死ぬんだ私…って思ったのは鮮明に覚えてて…」
そう言う佐藤さんの声は震えていて、わたしの嫌な予感はまた加速した。
恐る恐る、そのカーテンの音が鳴らないように手で寄せて二人の姿を確認した時、
陣平くんは、佐藤さんの肩を抱いて腕の中に引き寄せた。
ドクンッ
わたしの心から、軋むような音がした。
「もう、大丈夫だから。
悪かったな…俺のせいで」
「っ…松田くんのせいじゃ…私が勝手に」
「いや。俺を庇ったんだから、俺のせい」
やだ…抱きしめながらそんな会話しないで…
この期に及んで、わたしの嫉妬心は収まることを知らないらしい。
怪我している患者さんなのに、佐藤さんがまるで陣平くんを奪いにきた敵に見えた。
抱きしめているのは、むしろ陣平くんの方なのに。
「私、目が覚めて松田くんの顔見た時…安心した。
手、握ってくれてたんだと分かって、嬉しかった」
やめて…その続きは言わないで
そう思ったけれど、無駄だった。
佐藤さんの気持ちは、もう自分じゃ制御不能なぐらい溢れてたんだと思う。
きっと、これまで陣平くんのことを必死に諦めようとしてきた分、想いが決壊したように見えた。
「私、やっぱり松田くんが好き」
わたしは、持っていたブランケットをぎゅっ…と抱きしめながら、音を立てないようにその場を後にした。
バレないようにできるだけ静かに…
そう思ってとった行動が仇になったかのように、佐藤さんの声がもう一度聞こえてきた。
「好きなの」
耳を塞ぎたくなるような、純粋な告白を
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