第46章 キスと告白と
実習の終了時刻を迎えたけれど、佐藤さんの病状とそれに付き添う陣平くんが気にかかったわたし。
もともと、今日は病院に残って国試の勉強をしようと思っていたし。と、言い訳しながら、わたしは救命センターの医局で参考書と睨めっこしていた。
ふと気付けば時刻はもう21時。
「陣平くん…夜通し付き添うなら毛布とかあった方がいいよね」
彼の性格的に、佐藤さんが目を覚ますまでずっと付き添うつもりだろう。
かと言って、あのままうたた寝をしたら風邪をひいてしまう。
そう思ったわたしは、ブランケットを手に取るとそれを陣平くんに渡そうと佐藤さんの病室へ向かった。
陣平くんと話したい。
些細な話でいいから、夕方に感じたあの最低なモヤモヤを晴らしてほしい。
そしてあわよくば、一度だけ抱きしめてキスをして
そんな欲張りなことを考えながら、陣平くんと触れ合う口実のブランケットを抱えたまま、佐藤さんの病室の前に到着。
よく見ると、ドアは半分開いていてカーテンの向こう側に二人が居るみたい。
二人はわたしが病室までやってきたことには気づいていないようだ。
その、半分開いているドアをノックしようとした時のことだった。
「手も…握っててくれたの?」
「…まぁな」
「離さないで」
病室の中から聞こえてきたこのやり取りに、ノックをしようとしたわたしの手がぴたりと止まる。