第45章 好きなの
処置中、わたしは実習生としてサポート係を担いながら、救命医達の処置と藍沢先生の処置を観察していた。
腹部を貫いた銃槍は縫合に成功。
倒れた時に出来た脳挫傷も処置は終わり、出血の割には大きなオペも必要なく一般病棟へ入れそうとのことだ。
「萩原。ベッドの確保」
「すでに終わってます。1Bに空きがありましたからそこへ」
「よし。運ぼう」
藍沢先生にそう言われ、佐藤さんを乗せたストレッチャーを押しながら処置室を出ると、目の前のベンチに座っていた陣平くんがガタッと立ち上がった。
「佐藤!!」
「佐藤くん!」
同時に、陣平くんの隣にいた上司らしき人も佐藤刑事の名前を呼び、ストレッチャーに駆け寄ってくる。
その様子を見て、藍沢先生が口を開いた。
「佐藤さんの…」
「申し遅れました。私、警視庁の目暮といいます。
佐藤の上司です」
「そうですか。
勤務中の出来事だと聞いていますので、怪我の状況をご説明します。
弾は腹部を貫通していましたが、臓器に損傷は見られず、出血の割に致命的な傷ではありませんでした。
倒れた時に出来た頭の傷も、見た目より軽く、縫合で出血も止まりました。
今は麻酔で眠っていますが、おそらく麻酔が切れた頃に目を覚ますでしょう。
念のため、1週間ほど入院して様子を見ます」
「…よかった」
ホッと肩を撫で下ろした目暮警部の隣で、陣平くんも心底安心したような顔をした。
「このまま、一般病棟に移ってもらいますが、付き添われますか?」
「俺が付き添います」
目暮警部が返事をする前に、陣平くんが一歩前に出てそう言った。
藍沢先生は少し間を開けたあと、首を縦に頷く。
「わかりました。こちらです」
そして、藍沢先生、わたし、陣平くんの3人で気まずい沈黙の中、佐藤さんを病室まで運ぶこととなった。
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