第45章 好きなの
よく見ると、陣平くんの両手には彼女を抱き上げた時についたのであろう血がべっとりと付着している。
こんなまさかの状況に呆気に取られるわたしをよそに、医療現場は目まぐるしいスピードでまわる。
「急いで処置室へ運ぼう。
萩原。藍沢先生は?」
「処置室へ来てくれるそうです」
「よし。行くぞ」
そう言いながらストレッチャーをガラガラと押してまた走る医師、そして看護師。
それに陣平くんは心配そうに深刻そうに横たわる佐藤さんを見つめながら並走してくる。
陣平くんが一緒ってことは、捜査中に撃たれたってこと…?
そんな危険な捜査してたの?
一歩間違えれば、陣平くんが撃たれていたということ…?
そう思いながらも今は目の前の患者を救うことが最優先だ。
実習生のわたしも緊急処置とオペに立ち会うべく、処置室へと入った。
陣平くんも処置室の前までは着いてきたけれどそこから先は看護師に止められ、処置室の扉が閉まる隙間から陣平くんの悲痛そうな表情が見えたかと思えばパタンとドアが閉まった。
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