第45章 好きなの
そうしてわたしと指導医が救命の処置室に到着するやいなや、出入り口に白車が到着したようだ。
今度は救急車からストレッチャーに乗せた患者を処置室に運ぶために、全速力で走って救急車を迎えなければならない。
医者は、特に救命医は体力、気力がさらに必要になってくるのを痛感しながら走り、ちょうど救急車が到着したタイミングでわたしたちも迎えに駆けつけた。
到着したばかりの救急車の扉が開くのを唾を飲み込みながら凝視する。
ストレッチャーに乗せられて救急車から患者として運び込まれるのは、きっと陣平くんではない別人だ。
そう頭では思うのに
どくん…どくん…
心臓が嫌に鳴る。救急車の扉が開くのがスローモーションに思えた。
そして中から出てきた人物を見て、わたしは更に目を見開いてその人物の名前を呼んだ。
「じ…んぺ…く…」
そう。救急車の中から出てきたのは、わたしの恋人の松田陣平だった。
けれど、彼はストレッチャーに横たわることなく、平然と自分の足で救急車を降りてきた。
「ど、ういうこと?患者は…?」
「…俺は付き添い。撃たれたのは…」
そう言われてストレッチャーに横たわり、酸素マスクを付けた患者を見ると、そこにいたのは
「さ…佐藤刑事!」
そう。陣平くんの教育係でわたしの恋敵の佐藤美和子さん。
彼女こそが、銃で撃たれた警察官だった。