第45章 好きなの
佐藤side
今回も、松田くんの型破りな捜査や犯人の確保にヒヤヒヤしたけれど、無事に被疑者を確保することができた。
むしろ、私なんかよりも刑事としては優秀なのかも…
悔しいけど。
そう思いながら、飄々と犯人の身柄を確保する松田くんを眺めていた。
まったく…一歩間違えれば懲戒処分モノよ?そんな強引な確保…
人質にもしものことがあったらどうするのよ!
心の中でそんな小言を言いながらも、私は松田くんの中に自分は持ってない無いものをたくさん見つけていた。
誰もやらないようなことを、さらっとやってのけるくせにそれを誇張しようとしない。
常識なんて二の次で、常に目の前の問題を解決することに重きを置いて行動してる。
まったく。敵わないんだから…
好きだと言ったと思えば、すぐに忘れて?と言ったハッキリしない私にも、相変わらず普通に接してくれてるし。
こんなこと考えてしまってる時点で私は、松田くんのこと少しも諦めきれてないらしい。
それどころか、一緒に捜査をすればするほど
一緒に仕事をこなせばこなすほど
時間を過ごせば過ごすほど、松田くんに落ちていく。
そんな感覚がしていた。
そんなときだった。
ふと、野次馬の中で目に入った1人の女。
顔を隠すみたいにキャップをして、黒いパーカーを着ている怪しげな女だった。
そしてその手に握られていたのは…
「拳銃…!?」
確かに、ハンドガンに見えた。
そして女はそのハンドガンをまっすぐに構えた。
銃口が向けられたその先には、犯人を確保した松田くんがいる。
ふと脳裏によぎったのは私の父親だ。
あの日、父が車に撥ねられたと母に連絡があり駆けつけた現場。
血だらけになった父と救急車に乗り込んだあの時のことを。
「松田くん!!!危ない!!!」
咄嗟に出た私の言葉に驚いたような顔をした松田くんが目に映った。
パァンッ
という破裂音の後に感じたのは、
彼の苦いタバコの匂いだった。
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