第45章 好きなの
やっぱり俺にあの時好きだと言ったのは一瞬の気の迷いで、本人もきっと無かったことにしたかったんだろう。
心配して損した。
なんて思いながら、相変わらずジトーっと俺を見ながら佐藤が口を尖らせた。
「ちょっと聞いてる?」
「聞こえねぇなー」
「なっ!わたし、一応あなたの教育係なんだけど!」
そんな俺たちのいつものやりとりを、捜査一課の面々は呆れたように、そして中には俺に敵意を向けながら睨んでいる。
そんなときだった。
「至急 至急
米花町 センタービルの屋上で刃物を持った男が人質を取り、立て籠っているとの通報あり。」
庁内の捜査一課執務スペースにその放送が鳴り響いた。
「おっ。なんて言ってたら事件のお出ましか…」
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないでしょ!
ほら、行くわよ!」
「へいへい…」
完全に刑事の顔をした佐藤に言われた俺は、はぁ…とため息を吐きながらも佐藤と共に赤いRX-7に乗り込んだ。
まさかこのあと、あんなことが起こるとは夢にも思っていなかったんだ。
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