第5章 妹なんかじゃない ☆
「ん…」
ふと目を覚ました。
まだ外は暗い。今何時…?
そう思いながら部屋の時計を見ようと身体を起こしたとき、陣平くんが隣にいないことに気づいた。
時間より彼が気になって、キョロキョロと辺りを見渡すと、ベランダでタバコを吸っているのが見えた。
ベランダに続く窓ガラスをほんの少し開けると、台風が過ぎ去った後の冷たい空気が肌を刺す。
陣平くん。と、彼の名前を呼ぼうとしたとき、彼の肩が震えていることに気づいた。
陣平くんは、タバコを手に持ったまま、バルコニーの柵に寄りかかり、消えそうな声でぽつりとこぼした。
「萩…ごめんな…
お前の大事な妹、汚しちまった」
陣平くんの背中には、後悔という文字が見えた気がした。
やっぱり、正しくないことはしちゃいけないんだね。
だけどわたしは嬉しかった。
陣平くんがわたしに触れてくれることも
わたしの身体を抱きしめてくれることも
何度も何度もキスをしてくれたことも
陣平くんの一番近くにいけたことも
全部、嬉しかったよ。
どうしようもなく。
それが間違いだとするなら、わたしたちは、いつからどこから間違ったのだろう。
彼の背中を見ていると、声をかけるなんてとても出来なくて、わたしは大人しくまたベッドに戻り、陣平くんの香りを必死に嗅いだ。