第5章 妹なんかじゃない ☆
松田side
ミコトを抱いたあと、バルコニーでタバコを吸っていると、不意に萩の顔が浮かんだ。
あいつの置き忘れて行った大事な妹を、俺はこの手で汚してしまったんだ。
いつかこんな日がくるんじゃないかとずっと思っていた。
我慢できずに、ミコトを抱いてしまう日が。
ミコトを自分のものにしたくて、歯止めが効かなくなって、結局最後まで。
まだ好きだとも伝えていない癖に、最低だな。
萩は怒っているだろうな。
俺の大事な妹に手ェ出すんなら、ちゃんと責任取れって殴りかかって来そうだ。
俺の身体に残ったのは、萩の宝物を傷つけた後悔と、ミコトに向かう気持ちが止められない焦燥感。
「萩…俺はどうすればいい」
俺は自分の命を捨てでも、萩の仇を取りたいと思ってる。
もしも最悪の事態になった場合、ミコトはきっとまた萩原が死んだ時みたいに絶望するんだろう。
だから、せめてあの爆弾犯を捕まえるまではミコトに好きだと伝えられない。
どうすれば正解だった?
どこで間違えた?
なあ、萩原…
聞いても答えが返ってくるはずもなく、吐いたタバコの煙だけがユラ…と夜空に消えて行った。
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