第44章 誕生日の夜に ☆
やれやれ。と、ケーキをフォークで掬った俺だが、だんだんミコトのその可愛すぎる顔を見ていると、ケーキを放り込むのはもったいなく思えてきた。
俺は、自ら身を乗り出すと、目を閉じて口を開けるミコトの頭を手で寄せ、ゆっくりと唇を重ねて舌をいれた。
「っ…ん…っ…」
思わず漏れたミコトの声がまた可愛くて、ますます俺の行為に拍車がかかる。
くちゅ…と舌と舌を絡めると、漏れ出す吐息がだんだん空気を妖美に変えていく。
ケーキなんかより、よっぽど甘い舌を吸って、歯列をなぞり、食べるように味わった俺が唇を離すと、ミコトは顔を赤く染めながら言う。
「いつもタバコで苦いのに、今日はケーキより甘いね。陣平くんのキス」
「同じこと、思ってんじゃねーよ」
「え?」
「いや?こっちの話。
…ケーキ、食べたい?」
自分から仕掛けたさっきの濃厚なキスのせいで、正直もう食事どころではないテンションの俺。
卑怯にも、この後の時間の過ごし方をミコトに委ねた俺だが、ミコトもちゃんと俺と同じ気持ちだったらしい。
「食べたい。けど、後にする。」
そう言うと、ミコトはカタン…と座っていた椅子から立ち上がり、俺の方へ近づいてきた。
そして、とろんとした瞳で悩ましげに俺を見つめながら、俺の頬に手を添えた。
「先に、陣平くんをたべたい」
「…俺がお前を食べるんだって」
そんなエロい顔して俺のこと食べたい。なんて、破壊力抜群の技に、俺は心底ドキドキしながら強がりを返した。
そんな俺に、追い打ちをかけるかのようにミコトは吐息混じりに耳元で囁いた。
「ベッドに連れてって?」
考えるより先に体が動く俺は、すぐさまミコトを抱き上げると、ベッドルームのベッドに寝かせる。
そして、首元に吸い付いた瞬間、ミコトから甘くていやらしい声が漏れた。
「あっ…」
ゆっくりと離れると、白い首筋には俺がつけた赤い印がついたのが見えた。
たったこれだけで、こいつは俺のもんだと再確認できる。単純な脳みそしてんな…俺は。
そう思っていたら、ミコトは顔を赤くしながら上目遣いで俺を見ながら言う。
「陣平くん。また来年も、お誕生日祝ってね?」
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