第43章 もしかしたらこれが最後のハッピーバースデー
そしてそのすぐ後に、ふと、テーブルの上にあるものを見て、目をゆっくりと見開いた。
「え…陣平くん…」
「…お前、今日誕生日だろ?
…飯と、ケーキつくった」
「作ったって…え…
これ、全部陣平くんがつくったの?!」
テーブルの上並べられた、ロールキャベツとエビのマカロニグラタン。
シーザーサラダに、かぼちゃのスープ。
Happy Birthdayと書かれたホールケーキに、マジパンで作った俺とミコトの人形。
俺のこの数時間ぶんの努力の結晶を眺めたミコトは途端に眉を下げて涙をじわりと浮かべた。
まぁ、見た目は随分と不恰好だからな…
やっぱり女って、見た目が洒落ていたり綺麗だったり、そんなものが好きだよな…
誕生日なんだし、やっぱどっかのレストランを予約した方が良かったのか…
何も言わずにポロポロと涙を溢すミコトに、俺は慌てて頭を撫でながら弁解した。
「っ…」
「…初めて作ったから、不恰好だけどよ。
やっぱ、嫌か?今からでも買って…」
「っ…バカ!!」
「はぁ!?馬鹿!?てめ…俺が誰のために…」
「嫌なわけないでしょ!?むしろ、嬉しすぎて…っぅううぇええ」
「あぁーもう!泣くなって」
なんだ…ガッカリしたわけじゃ無かったのか…
ミコトの涙が嬉し涙だと分かり、心底ホッとした俺はそれと同時に愛しさが増していく。
泣いている彼女を腕の中に閉じ込めて抱き締めると、うー…と胸に擦り寄ってくる。
そして、肩を震わせながら声を絞り出すようにして漏らした。
「陣平くん…怖いよ…
幸せすぎて、怖い…」
ミコトはよく、幸せ過ぎて怖い と口にすることがある。
定期的にやってくるこの発作のような現象に、俺は抱きしめながら髪を撫でて落ち着かせてやろうとする。
こうする以外に、何もしてやれねえから。