第43章 もしかしたらこれが最後のハッピーバースデー
ショッピングが終了し、諸伏を引き連れたまま帰宅。
いつもはミコトが使っているキッチンに俺がエプロンを付けて立つのは何だか物凄く違和感がある。
「よし。やるぜ…」
「じゃあ、まずは手を洗って、野菜を洗って皮を剥くところからだな」
と、隣に立ってまるで料理教室の先生のように丁寧に教えてくれるヒロの旦那。
マジで、今日諸伏が非番で良かった…と、心底思いながら俺は言われるがまま包丁で皮を剥いていく。
「へぇ。さすが松田。
器用に包丁を使うんだな」
「あー?必死だっつの…」
「オレ、こっちのニンジン剥いてるよ」
そう言って諸伏が手伝おうとニンジンとピーラーを持った瞬間、俺は即座にそれを静止した。
「あ!!待った!!」
「え?」
「…俺が全部1人で作りてえんだ」
「松田…」
ヒロの旦那は目を丸くして俺を見て、かたや俺は自分で言ってて恥ずかしくなってかぁあっと顔が熱くなった。
なにムキになってんだ俺…
と、照れ隠しに慌てて皮を剥くスピード早めていると、ヒロの旦那はまた優しく笑った。
「分かった。オレは手を出さないことにする。
その代わり、口は10倍出すけど」
「のぞむところよ」
そうは言ったが、手先は器用なものの根は大雑把な俺。
生真面目な諸伏に何度もどやされながら、慣れない料理に四苦八苦すること数時間…
*
*