第43章 もしかしたらこれが最後のハッピーバースデー
翌日
溜まっていた調書の処理を爆速で終わらせた俺は、予定通り零が予約したいつもの店に足を運んだ。
「ここも、しばらく来てなかったな…」
店の前に立って暖簾を見上げると、萩とよくここに飲みに来たことを思い出した。
あの日も…仕事終わったらここで一杯やろうぜ。って言ってたんだよな。
結局、叶わなかったけど。
そんなふうに感傷に浸りながら店の引き戸を開けると、店の中に零と諸伏の姿が見えた。
「ういーっす」
「松田。無事に退勤出来たなんて、奇跡だな」
ヒロの旦那が俺の顔を見て笑った。
「お前ら公安の方が忙しいだろうよ」
「この3人が揃うのは確かに、奇跡に近いな。
生で良いか?」
「お、さすが零。正解」
まずは生で仕事の疲れを癒したいと考えていた俺の頭の中は、零に透けて見えていたらしい。
生3つと適当につまみになる食べ物を頼むと、すぐに生3つが運ばれてきた。
「んじゃあ、久々の同期会ってことで」
と、幹事でもねぇ俺が音頭をとり、ビールジョッキをカツンッと軽快に鳴り合わせた。
ゴクゴクと豪快にそれを流し込む3人。
ぷはーっと息を吐くタイミングも同じだ。
「どうよ、公安は。毎日忙しいか?」
「それなりに。
忙しいくてついついコンビニ弁当ばかりになるから、最近ヒロに簡単に作れる料理を教わってるんだ」
「ゼロは、器用だから何でもすぐに覚えて作ってるよな」
相変わらず2人の仲の良いこと。
降谷と諸伏のやりとりを微笑ましく眺めながら、俺は続けた。
「あー。そういや、ヒロの旦那は料理も上手かったよな」
「松田は?…そっか。同棲してるんだったな」
「彼女の美味しい手料理を毎日か。
班長も松田も、羨ましいよ」
なんて、零だってその気になれば料理作ってくれる彼女なんざすぐに見つかりそうなくせして。