第43章 もしかしたらこれが最後のハッピーバースデー
わたしは、陣平くんの背中に手を回してぎゅっと抱きしめ返しながら、顔を彼の胸の中に埋めた。
そして、つい本音がポロポロと溢れる。
「陣平くん…怖いよ…
幸せすぎて、怖い…」
怖いんだよ…陣平くん。
幸せを感じれば感じるほど、手のひらからこぼれていきそうで…
そう言って肩を震わせて泣くわたしの髪をぶっきらぼうに撫でて、陣平くんは呆れたように笑った。
「俺がここにいんのに、怖いことなんてねぇだろ?」
「っ…いなくならない?
ずっと、一緒にいてくれる?」
「何度目だよ。お前とこの約束するの。」
陣平くんはわたしの瞳に溢れた涙を指で拭って、わたしの瞳をじっと覗きながら言った。
「ずっと、お前のそばにいる。
誕生日、おめでとう。
来年も俺がこうして祝ってやる。再来年も、その次も」
その言葉を聞いて、またわたしの目から涙が溢れた。
ねぇ、神様。
この約束だけは、叶えさせてください。
ただ、陣平くんと一緒に未来を生きたいだけ。
10年後も20年後も、幸せな顔して笑う陣平くんを隣で見ていたいだけ。
たったそれだけを願うのは、ワガママですか?
ポロポロと溢れる涙をまた陣平くんが拭い、瞼にキスをした後、ゆっくりと唇を重ねた。
ずっと一緒にいると約束したあとの、陣平くんのキスはいつもより優しいと思った。
まるで、誓いのキスみたいに。
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