第43章 もしかしたらこれが最後のハッピーバースデー
ふと、テーブルの上にあるものを見て、わたしは目を見開いた。
「え…陣平くん…」
「…お前、今日誕生日だろ?
…飯と、ケーキつくった」
「作ったって…え…
これ、全部陣平くんがつくったの?!」
テーブルの上には、わたしの好きなロールキャベツとエビのマカロニグラタン。
シーザーサラダに、かぼちゃのスープ。
そして、Happy Birthdayと書かれたホールケーキに、マジパンでわたしと陣平くんらしき人形が乗ってる。
全部、買ってきたにしてはどこか少し不恰好で、それが全て陣平くんの手作りなんだと実感させられた。
思わず、目の前が涙で滲む。
だって…こんな、嬉しすぎるプレゼントを用意してくれてるなんて、思わなかった。
誕生日どうする?ってことすら聞かなかったし話題にもしなかったのに。
結局また、陣平くんが幸せで上書きしてくれた。
「っ…」
「…初めて作ったから、不恰好だけどよ。
やっぱ、嫌か?今からでも買って…」
「っ…バカ!!」
的外れなことを言って慌てる陣平くんに、わたしは思わず声を荒げた。
「はぁ!?馬鹿!?てめ…俺が誰のために…」
「嫌なわけないでしょ!?むしろ、嬉しすぎて…っぅううぇええ」
「あぁーもう!泣くなって」
もう感情が抑えきれなくなって、子供みたいに号泣するわたしを見た陣平くんは、慌てて宥めるようにわたしを抱きしめた。
いつもするタバコの匂いが、今日は料理の匂いにかき消されてる。
こんなに匂いがつくまで、キッチンで頑張ってくれたんだ…
陣平くん、料理全然ダメだったのに。
何品も、それも全部手間のかかるものばかり。
わたしがいない間に頑張って作ってくれたんだ…