第43章 もしかしたらこれが最後のハッピーバースデー
コスメや洋服、雑貨なんかをいくつか購入したわたしたちは、ランチをとるためお洒落なカフェレストランへ足を踏み入れた。
「久しぶりにこんなに買ったわ!」
満足そうに紙袋を見ながらそう言うアユに、わたしも珍しく自分用に買ったリップグロスを袋から出して中を開けてみる。
「だねー。実習始まってから、お洒落して出かける頻度も減ったから買い物する頻度も減るよね」
「でも、ミコトは今日オシャレして出かけるんでしょ?」
「?なんで?」
「なんでって…今日、あんた誕生日じゃん。
おめでとう。これ、プレゼント!」
そう言ってアユはわたしに紙袋を差し出した。
「え!ありがとう!!」
「彼氏と使えるように、バスボムのセットにしたよ!
まあ、今日はどうせ夜はお出かけだろうから使うのは明日以降?」
そう言って、まるで自分のことみたいに楽しそうにしているアユに、逆に申し訳なくなって特に予定がないことを伝えた。
「あー…別に、お出かけの予定とかないよ?」
「へ?向こう、仕事?」
「たぶん仕事だと思う…と言うか、ダメなの」
陣平くんが仕事かどうか?はわたしの中でさほど重要じゃなかった。
わたしから出た「ダメなの」という意味不明な言葉に、アユは首を傾げて尋ねた。
「ダメ?なにが?」
「陣平くんのこと好きすぎて、最近幸せすぎて…怖いんだよね。
この幸せな時間が、ある日突然無くなっちゃいそうで。
…怖いんだ」
そう。
怖いの。
幸せを感じれば感じるほど、それを失う時の辛さが何倍にも膨れ上がっていくようで怖い。
時間を重ねれば重ねるほど、あの11月7日に近づいてくのが怖い。
今日、陣平くんと誕生日を過ごす。
けれど来年は1人かもしれない。
幸せな誕生日は最後になるかもしれない。
そう思うと、怖くて仕方ない。