第43章 もしかしたらこれが最後のハッピーバースデー
ただいま日付が変わった深夜0時10分。
つまり、わたしの誕生日がスタートした10分後だ。
ベッドでゴロゴロしながら、明日の待ち合わせの時間を確認していると、寝る支度を整えた陣平くんが隣にゴロンと寝転がり、わたしから携帯を取り上げた。
「あっ!わたしの携帯!」
「没収」
そう言いながら携帯を充電器にセットする陣平くん。
わたしはそれを取り返そうと頑張って手を伸ばしながら陣平くんに身体を近づけると、陣平くんが両腕でわたしの身体をぎゅっと捕まえた。
「わ…捕まった…」
「ミコト」
「?ん?」
「誕生日、おめでとう」
耳元で、陣平くんの声で、1番におめでとうを聞けた。
幸せで幸せを上書いていく陣平くんは、何度わたしを喜ばせれば気が済むんだろう。
「陣平くん…大好き…!!」
嬉しくて、つい大袈裟にリアクションを取ったわたしは、飛びつくように陣平くんの身体にぎゅっと抱きつくと、陣平くんは「はいはい」なんて笑いながらわたしの髪を撫でた。
ねぇ、陣平くん。
こんなふうに一緒に眠れるのはあと何回なんだろう。
幸せだと感じれば感じるほど、同時に最悪の事態が起こった時の恐怖が支配してくるの。
もし陣平くんが、未来のままの結果になったら、わたしはまた一人ぼっちでこの世界に取り残されるの…?
そしてまた、陣平くんと過ごした日々を想いながら月日を重ね、ある日突然またタイムスリップ?
そうして無限ループに陥ったら…
考え出すと止まらなくて、わたしは陣平くんの腕の中にしがみつきながら、ぎゅっと目を閉じた。
いっそのことこのまま、陣平くんと2人だけの世界に閉じこもりたい。
鍵をかけて、誰も何も入ってこれないようにして、ずっと2人だけの時間が流れる。
そんな場所があればいいのに…
なんて、誕生日なのにそんな後ろ向きなことばかり考えながら、陣平くんの匂いを嗅いで眠りに落ちていった。
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