第41章 告白
「…なら、俺がここを辞めれば気が済むんだろうよ。
っつか、もともと、強行犯係じゃなくて特殊犯係へ転属を希望してたんだ。
それが叶わねえならまた爆処に…」
「それも嫌!」
「はあ?!」
なんだこいつ…俺と一緒に組むのがもう嫌だと言ってるんじゃないのか?
ミコトのために必死になる俺を見るのが嫌。
だったら俺が消えればいい話じゃねぇか。
なのに、俺が爆処に戻るのも嫌。
もうどうしろと??
そう思いながら佐藤を見ていると、佐藤は俺を腕を掴んだまま声を震わせた。
「なによ…急に私の前に現れて、いつも態度は最悪、口も悪くてずっと目が離せなくて…
なのに不意に優しくして、人の気持ち全部掻っ攫っていったくせに、またいなくなるの!?
そんなの嫌よ!」
「だから、何でだよ!人の気持ち掻っ攫ったって何の話…」
「好きなのよ!」
佐藤は一段と大きい声で、俺の腕をぎゅっと掴みながら真っ直ぐにそう言った。
は?好き?何が?何を??
この期に及んでまだそんなことを思った俺に、佐藤はこのバカでも心底分かりやすくもう一度伝えてくる。
「松田くんが好きなのよ…だから、もう…
あの子のことで必死になるあなたを見るのは嫌なの」
松田くんが好き
確かにそう言った。
って、佐藤美和子が俺のことを好き…?
え…今まで散々俺に説教垂れていたのは愛情の裏返しってことか?
まるで異次元空間に突き落とされたかのように、頭の中がぐちゃぐちゃになっている俺だがこれだけは言える。
「…ごめん」
即答で、この一言だけが口から出た。
考えるよりも先に、ミコト以外考えられないという結論がこぼれたんだ。
「…」
佐藤は、何も言わずに俯いて俺の腕を掴む力をぎゅっと強めた。
俺はそれをゆっくりと外しながら、もう一度丁寧に伝える。
「今の話が本当だとしても、気持ちには応えられない。
…ごめん。」
佐藤は何も言わず、外された手だけがだらんと力無く下げられた。
「…煙草、吸ってくるわ…」
決死の告白をした佐藤にその一言だけを残し、俺はまたゆっくりと喫煙所までの階段を登っていった。
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