第41章 告白
短気なところは、俺のウィークポイントだとよく警察学校の教官に言われたな。
そんなこと、なぜか今更思い出した。
苛ついたのが顔に出たまま、俺はミコトに反論する。
「論理的な根拠はないってことだな」
「陣平くんは、藍沢先生のこと疑ってるの…?」
「一番の容疑者だ」
そう言うと、ミコトはガタンッとその場を立ち上がった。
俺が食べるのを眺めていたせいで、まだ一度も箸をつけてないくせに。
「おいミコト…待てよ」
怒って寝室に閉じこもろうとするミコトの腕を掴み、身体をこちらに向けるとミコトは目に涙を溜めた状態で俺を睨んだ。
「藍沢先生は、人の命を救うことはあっても、誰かの命を奪うことなんて絶対しない。
陣平くんのバカ!」
顔を歪ませながらそう言ったミコトの瞳から、一筋涙がこぼれたと思えば、ミコトは俺の手を振り払って寝室に逃げ込むと扉をぴしゃっと閉めた。
「ミコト!…んだよ…」
ミコトにとっては、憧れの医者だ。
そんな医者を殺人者扱いしたのだから、きっとミコトの医者になるという夢を否定されたような気がしたんだろう。
なんで…今さっきまでふたりで幸せに飯を食おうとしていたのに、こんなことで喧嘩かよ…
けれど俺は、その扉を開いて謝ることができなかった。
ミコトがそんなにムキになって怒るのは、憧れの医者 だから。
本当にそれだけか?
俺がちゃんとミコトのことを大切にしていれば何も不安になることはないんだ。
ついさっきそう思ったことが、そっくりそのまま返ってきた気がする。
俺がこんなに不安になるのは、ミコトのことをちゃんと大切にしてやれていないという後ろめたさがあるからなんじゃないかと。
扉を叩こうとして振り上げた拳を力なく下ろした俺は、どうすればいいか分からなかった。
初めて、真剣に人を愛した俺は、上手に気持ちを伝える方法すら知らなかったんだ。
*
*