第40章 疑惑
あまりにも表情ひとつ変えずに答えるので、佐藤も拍子抜けしたような顔をした。
「それで、その方が遺体で発見されたこととが私に何の関係が?」
「藍沢さん。3ヶ月前の9月3日夜18時から翌日朝方まで、どこで何をしていましたか?」
「9月3日…?勤務表を見てみないと明確なことは言えませんが、おそらく勤務していたと思いますよ。
当直かどうかはすぐには思い出せません」
「勤務表を別の方に持ってきてもらって、今ここで確認していただくことはできますか?」
「…」
その言葉を聞いて、藍沢は何も言わずに胸ポケットに入れていた病院内の連絡用のPHSを取り出して電話をかけた。
「…藍沢だ。9月の脳外科勤務表を会議室まで持ってきてもらえるか?
あと、日報も。あぁ。頼んだ」
しばらくしてコンコンと部屋をノックする音が聞こえ、俺たちをこの会議室に案内した看護師が勤務表を持って部屋に入ってきた。
「こちらです」
「ありがとう」
勤務表と日報を受け取った藍沢は、9月3日のページを開いて眺めた。
「あぁ。あの日か。9月3日」
「あの日?」
何かを思い出したように声を上げた藍沢。
すかさず佐藤が突っ込んだ。
「何か、思い当たることでも?」
「いや。この日は夕方から夜までずっとオペで、そのあとそのまま当直でした。
しばらく医局で過ごしていたら、深夜の急患が入ってまたオペを。
その後また医局で朝まで書類整理をしていました」
「医局にいたのはだいたいそれぞれ何時間ほどですか?」
「正確にはオペの記録を見ればわかると思いますが、それぞれ3〜4時間ってところかと」
「手術中以外の時間はずっと医局にいたとのことですが、
それを証明できる人はいますか?」
「ええ。実習生の萩原とずっと一緒でした」