第40章 疑惑
松田side
通された会議室は、さっきまでミコトと藍沢が面談をしていた場所だった。
4席あるうちの1つに腰掛けた藍沢は、その正面の2席を指して俺たちに どうぞ と言った。
「失礼します」
何も言わずにガタンと乱暴に腰掛けた俺とは違い、佐藤は律儀にそう言って会釈をしたあとに着席する。
そんな余裕、俺には微塵もなかったんだ。
「それで、話ってなんですか」
時計を見ながら忙しなさそうにする藍沢に、佐藤は一枚の写真を見せながら聴取を始めた。
「こちらの男性、ご存知ですか?」
「…ええ。私が過去に受け持った患者のご家族ですが。その方が何か?」
「昨日、遺体で発見されました。」
「そうですか」
警察の事情聴取だと言うのに至って冷静に表情一つ変えずに淡々と話に答える藍沢。
普通、事件に関係無かったとしても遺体で発見されたと聞けば驚くなり表情に出るはずだ。
けれど藍沢にはそれがない。
「随分と冷静なんですね。
驚かないんですか?遺体で発見されたと聞いて」
佐藤も同じ点が気になったらしく、そんな質問を投げかけた。
「脳外の前は救命医をやっていましたから。
人の死は突然訪れる。
朝普段どおりに見送った人が、偶発的な事故に巻き込まれて命を落とす。
そんな現実を今まで何度も目の当たりにしていたので。」
「そう…そんなものですか」
ミコトに昨日藍沢とはどんな医者だ?と聞いた時、いつも冷静沈着。と答えていた。
全くそのとおりだ。