第40章 疑惑
正面玄関から入り、外科病棟に向かった俺たちは近くのナースステーションにいるナースに声をかけた。
「すみません、ちょっとよろしいですか」
「はい?」
「警察です。この病院の外科に、藍沢浬さんという医師は在籍していますでしょうか?」
「はい。今ちょうど担当実習生との月次面談中で…」
「その場所まで案内してもらえますか?
面談が終わり次第、お聞きしたいことがあるので」
「わ、わかりました」
突然警察が尋ねてきて、只事じゃない雰囲気におののきながら一人の看護師が今藍沢がいる場所へと案内してくれることになった。
担当実習生との月次面談…
おいおいその面談相手ってまさか…
「こちらです。予定ではあと5分ほどで終わると思います」
「わかりました。前で待ちます。ありがとう」
看護師に案内された会議室のドアの前で待つことにした俺と佐藤。
俺の嫌な予感がもし的中していたら、この中にいるのは藍沢と…
その時、まだ5分も経たないうちに、会議室のドアがガチャりと開いた。
「じゃあ年が明けて2月からは救命での実習なので、またわからないこと色々と教えていただくかと思います」
「救命か…あそこは戦場だぞ。今のうちに体力つけておけよ」
そんな言葉を交わしながら出てきたのは、黒のスクラブに身を包んだ藍沢と白衣を着たミコトだった。
ミコトは扉を開けた向こうにまさか自分の恋人が立っているとは思いもしなかったんだろう。
俺たちを視界に捉えると、その大きな瞳をまんまるに見開いた。
「え…じ、陣平くん!?なんでここに…」
そんなミコトの問いかけに答えている余裕はなく、俺はミコトの隣にいた藍沢に1歩、1歩と近づいて警察手帳を見せた。
「藍沢浬さんですね。
時間、もらえますか」
藍沢浬の瞳と、俺の視線がバチバチに重なったのが見えた気がした。
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