第40章 疑惑
松田side
ミコトに藍沢医師の話を聞く時、自分も警察組織に染まってきたな…と自分で自分が嫌になった。
自分の大事な彼女に探りを入れるようなことして、かといって捜査情報を話すことは断じてできない。
明らかに不審がっていたミコトに、何も聞けない雰囲気を押し付けた俺。
さすがに、自己嫌悪に陥る。
「はあ…」
「?何よ。ため息ついて。松田くんが悩み事なんて似合わないわよ」
米花中央病院へ向かう道中、助手席で盛大なため息を吐いた俺に佐藤が毒を吐く。
「うるせえよ…今からの聞き込み、乗り気しねぇな」
「何言ってるの。手がかりはこれしかないのよ?
藍沢医師はあなたの彼女の指導医かもしれないけど、私達にとっては重要参考人なんだから」
「わかってるって…」
「昨日他の班からの報告によると、空港の防犯カメラには被害者の姿はどこにも写っていなかったそうよ。海外へ出国する予定だった前日に会社に休暇届を出しているから、おそらく殺されたのはこの休暇届を出した夜から出国日の朝にかけてね。」
「なるほど?じゃあ、その日時の藍沢のアリバイをまずは確認だな」
そう。今から藍沢医師に事件についての聞き込みに乗り込むことになっている。
思えばあの男とちゃんと言葉を交わすのは初めてだ。
何度か顔を見たことがあるが、話をするほど深い間柄でも無いし、俺は嫌いだし。あの男。
「ほら、着いたわよ」
憂鬱なことほど、やってくるのが早かったりする。
佐藤に促されて助手席を降りると、そこはもう米花中央病院の駐車場だ。