第40章 疑惑
「…藍沢って医者、どんなやつなんだ?」
「?どうしたの急に」
突然藍沢先生について聞いてくるなんて、明日は大雨でも降るんじゃない?
だって陣平くん、やたらと藍沢先生のこと目の敵にしていたし、藍沢先生の話は極力陣平くんの前ではしないようにしようと思っていたぐらいだ。
「別に、どんな医者なのかなーと思って」
「…うーん。一言でいうと名医。かな」
「名医…」
「うん。腕は超一流で、いつも冷静沈着。
どんな難しい症例でも、患者の命を救うためなら努力を惜しまない人。
冷たい人に見えるけど、実はいつも患者のことばかり考えてる。
…まあ、そんな感じの医者かな」
あまり褒めすぎるのも…と思ったわたしは、このへんで慌てて切り上げた。
陣平くんは特段大きく表情は変えずにその話を聞いていた。
「そうか…」
「…で、どうして藍沢先生のこと聞いたの?」
「お前が尊敬する医者って、どんなやつなんだ?と思っただけだ。
…お。相変わらずこのカレーうめぇな!」
と、もうそれ以上聞いてほしくないのが丸わかりの陣平くん。
結局、この日どうして陣平くんが藍沢先生のことを聞いてきたのかは分からなかった。
そのワケを知るのは、次の日のことだった…
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