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【R18】evermore 【DC/松田陣平】

第40章 疑惑




数時間後


「あった。これじゃない?!」


佐藤がデータベースから過去の裁判記録を見つけ出し、プリントアウトして俺に見せてきた。

それを受け取った俺は、そこに書かれている文字を口に出して読み上げていく。


「…今から2年前の訴訟か…
当時15歳だった脳腫瘍患者が米花中央病院で手術を受け、それ自体は成功した。
が、手術の後遺症により車椅子生活になってしまった。
そのことに絶望した権田原の娘は自らの命を絶った…」

「そんな…じゃあ、病院側の手術ミス?」

「…いや。記述によると、腫瘍は脳の深い部分に食い込んでいて、神経を傷つけずに取り出すのは不可能だったらしい。
医者としては、手術で後遺症が残ったとしても命を助ける方を優先したそうだ。」


医者というのは、こんな究極の選択をしなければならないのか…
ミコトが進もうとしている道は、茨の道だと再認識し少しだけあいつのことが心配になった。


「でも、命は助かったんでしょ?自殺の原因がその後遺症だったとしても、訴訟問題にまで発展する理由が…」

「その主治医が、手術の説明のときに言ったそうだ。
必ず、助ける。と。
命も、患者の未来も必ず救うと患者に約束をしてしまった。
その約束があったから手術を受けるのに同意したんだと、遺書に書いてあったらしい」

「…そうか…医者や弁護士、警察官のような人の人生を左右する仕事に就いている人間は、必ずって言葉を使って約束しちゃいけないのよね…」

「その一言で、訴訟を起こされるケースは多いらしいからな。
で、訴訟相手の名前は…」


そこに書かれていた名前を見て、俺は目を見開いた。
最近よく目にする、俺の最も敵視する医者の名前だったからだ。


「松田くん?」

「…藍沢 海里」

「知ってる人?」

「あぁ。俺の彼女の指導医だ」


まさかの展開に、俺の思考回路は一瞬止まった。




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