第40章 疑惑
松田side
被害者のマンション前に到着した俺は、目の前にそびえ立つ背の高い建物を見上げてほぉーっと口を開けた。
俺が住んでるマンションも結構背伸びしたなと思っていたがさすがセレブ。
雲まで伸びてんじゃねえかと思うほどの高層マンションを見上げると思わず首が痛くなった。
「ほら、聞き込みに行くわよ。
まずはお隣からね。
管理人室に行って、入れてもらいましょう」
「はいはい」
真面目な佐藤の後ろについて管理人室へ行き事情を説明すると、すんなりと中に入れてもらえた。
被害者の自宅はこの高層マンションの高層階。
まわりの住人は、政界の大物や芸能人、大企業の社長など名だたる顔ぶれだ。
「こりゃ、聞き込みするのも気ぃ遣いそうだな」
そんな愚痴を溢しながらも聞き込みを開始した俺達だが、一組め、二組めと話を聞いても特に事件に直結しそうなトラブルを抱えていただとか言う話はなかった。
みんな口を揃えて言うのが、
「とてもいい人」
「恨まれている心当たりなんてない」
その一点張りだ。
高層階の2フロア全戸の住民に話を聞いてもこれといった証言は得られず、俺たちは諦めてエレベーターでエントランスに降り、低層階の住人の話も聞くことにした。
「つーか。そもそもお隣同士ってそんなに交流あるもんなのか?
ここの住民、それぞれ大物で忙しくしてるんだろ?」
「そうねえ…そういう意味では、低層階の住人のほうが噂好きな人が多かったりするのかもね」
俺と佐藤の読みは当たっていた。