第5章 妹なんかじゃない ☆
それから、陣平くんは一度もわたしを泊まらせてくれなかった。
わたしはあの日から、いつ泊まってもいいようにと、次の日の下着を持ち歩く、一歩間違えれば尻軽女みたいなことをしてたけど、
夜遅くなりそうな時も、陣平くんがすかさず自宅に送り届け、結局お泊まりにならず。
ていうか、陣平くんを好きにさせる!と意気込んで色々やってるわけだけど、陣平くんがもしわたしを好きになったら、好きってちゃんと伝えてくれるの?
好きと言われてないってことは、まだ想いは実っていないということだよね??
と、自問自答し、はぁーーと深いため息を吐いた。
キッチンに立って、作った肉じゃがの味を確かめている時、ガチャっと玄関のドアが開いた。
見ると、ずぶ濡れの陣平くんが中に入ってきてる。
「おかえり!ずぶ濡れだ!どうしたの?」
「どうしたの?って、台風来てんの、知らねぇのか?」
「えっ!うそ!今の季節に?!」
天気予報なんて全く見ないわたしは、外が台風なんて気付きもしなかった。
慌てて携帯で天気を確認すると、ピッタリ台風進路と日本列島が重なっている。
「は、早く帰らなきゃ」
焦りながら慌ててエプロンを外すわたしの手を、陣平くんが止めた。
「さすがに、危ないって」
「…じゃあどうすれば…」
泊まっていけと言わせたいずるい女だ。
陣平くんは、少し迷った後、はぁーっとため息をつきながら頭を掻いて言う。
「泊まっていけよ」
「いいの!?」
「言われるの待ってたクセに白々しいぜ」
そう言いながら、陣平くんはぐしゃぐしゃと、いつもより大袈裟にわたしの頭を撫でた。
嬉しい。
今日は朝まで陣平くんと一緒にいられるんだ!
世間知らずなわたしは、ただ彼と一緒にいられる時間が伸びたことに喜んでいた。
まさか今日、彼の1番近い場所にいけるなんて、思っても見なかったから。