第39章 抱きしめることが出来る奇跡 ☆
松田side
ミコトと一緒に風呂に浸かった瞬間、俺は後ろからまたミコトの身体を抱きしめた。
ぱしゃ…とお湯が揺れて素肌が触れ合うと、ミコトは少しだけピクッと体を揺らした。
さっき、脱衣所でミコトの服を脱がした時もそうだが、いつもの俺ならここですぐにミコトの身体に触れてそのまま…というパターンがお決まりだ。
きっとミコトもそれを分かっていて、手を出してこない俺を不思議に思っているに違いねえ。
「…陣平くん?」
「んー?」
返事をするときも、ミコトを抱きしめる力を一層強めた。
ミコトを抱くよりもまず、ミコトと身体をずっと密着させていたい。
一瞬でも離れたくねえ。
昨日ミコトを失いかけた俺は、ミコトがちゃんと俺のそばにいると安心する方法がそれしか無かった。
「ほんとに抱きしめるだけなの?」
「…なんだよ。それだけじゃ物足りねえって?」
なんて、冗談を言ってみたけれど、それが図星だったらしくミコトの顔が一気にぼっと赤くなっった。
「…図星?」
「だって!!ずっと陣平くんに抱きしめられて、耳元に息がかかるし!
は、裸だし…抱きしめてる腕が胸に当たってるし…
そんなの、もっと触ってほしくなっちゃうじゃない」
それまで、下心なんて欠片もなかったくせに、ミコトが期待しているとわかると途端にその気になってくる俺はなんて単純なんだろう。
ミコトの肩に顎を乗せて、耳元をぺろりと舐めながら囁いた。
「じゃあ、どこ触ってほしい?」
「っ…恥ずかしくて言えない…」
「今更だろ…」
「っ…ここ…」
言葉で言うのはどうしても恥ずかしいらしい。ミコトは俺の手の手を取ると、むにゅ…と自分の胸に押し付けて来た。