第39章 抱きしめることが出来る奇跡 ☆
「陣平くん、抱きつかれてちゃ服脱げないよ?」
「んじゃあ、脱がしてやるよ。はい、ばんざーい」
「や!やだ!!エッチ!ヘンタイ!!」
陣平くんが後ろからわたしの服を捲くしあげて脱がそうとしてくるのを、わたしは慌てて止めた。
「ヘンタイって…仮にも彼氏に向かってそれはねぇだろ」
「だ、だって!こんな明るい脱衣所でいきなり脱がそうとするんだもん!」
「服着て風呂入れねえだろ?」
「…そうだけど…」
明るい場所、目の前に洗面台の鏡、しかも今日は脱がされる想定はなかったから勝負下着じゃない
色んな要素が重なって頑なに拒否していると、陣平くんはため息を吐いた。
「しゃあねえな。んじゃあ俺先に入るわ」
ほんの少し拗ねたようにそう言って、陣平くんがバスルームのドアに手をかけたとき、わたしは思わず陣平くんの腕を掴んだ。
わたしだって、陣平くんと一瞬でも離れたくないから…
「今日、全然可愛い下着じゃないの…」
「バーカ。そんなこと気にしてんのか」
「気にするでしょ…陣平くんには、可愛いところだけ見ていて欲しいもん」
そう言うと、陣平くんはわたしの頭をわしゃわしゃと撫でながら笑う。
「お前が可愛くない時なんて、見たことねえって」
「…ほんと?」
「ああ」
「…じゃあ、脱がせて…?」
顔から火が出そうなぐらい恥ずかしいけれど、思い切ってお願いすると陣平くんはわたしの頭をワシャワシャと撫でたあと、また服の裾を掴んだ。
「んじゃ、ばんざい」
そう言われておとなしくバンザイをすると、わたしの目の前を自分の服が通り過ぎていって、同時に背中のホックも外された。
文字通り、一糸まとわぬ姿をこの明るい場所で陣平くんの前に晒すことが未だに恥ずかしくてギュッと目を閉じていると、陣平くんが後ろからわたしの身体に大きめのバスタオルをふわっとかけてくれた。
「え…」
「ほら、行くぞ」
わたしが恥ずかしがっているのを分かってか、後ろから肩を押すようにしてバスルームまで連れて行く陣平くん。
いつもなら、強引に服を脱がしてなんならその場で手を出してきそうなものなのに、今日の陣平くんはいつも以上に優しくて、そして繊細だった。
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