第39章 抱きしめることが出来る奇跡 ☆
松田side
「ん…」
目を覚ますと、太陽の光は少し傾いてカーテンの隙間から俺の顔を照らした。
時計を見ると夕方。
6時間もぐっすりと夢の中だったらしい。
「ミコト…」
そう呟きながら腕の中にいるミコトの身体を抱きしめると、思った以上に柔らかくて思わず目を見開いた。
よく見ると、俺の腕の中にいたのはミコトがよく抱っこして寝ているテディベア。
見事な変わり身の術に、俺は思わずベッドから転げ落ちた。
「っうぉ!!?」
「あれー?陣平くん、起きたの?」
俺のこのコントみたいな動きを見て、キッチンの方から顔を出したミコトは笑いながら言う。
「起きたの?って…お前がクマに変わってるから焦ったっつーの」
「ごめんごめん、陣平くん起きたらお腹空いてるだろうなーと思って」
「…何作ってんだ?」
ベッドから起き上がった俺は、のそのそとキッチンに立つミコトの背後に回ると、料理中のミコトを後ろからぎゅーっと抱きしめた。
「味噌汁と、ピーマンの肉詰めと、副菜をいくつか…
時間的に夜ご飯と兼用になると思うから、お腹に溜まりそうなものにしたの」
「おー…美味そう…」
腹の音を鳴らしながらもミコトを抱きしめる腕を離さない俺に、さすがに料理がしづらいと思ったのかミコトが振り返って首を傾げた。
「…陣平くん、ずっとぎゅーしてるの?」
「今日はずっとこうしてる」
「ずっとって…」
当然のように、ずっとこうしてると言った俺に、ミコトはちょっとだけ困ったような顔をした。