第39章 抱きしめることが出来る奇跡 ☆
「…お前が、生きてて嬉しいんだよ…ばかやろ…」
そう言った陣平くんの声は少し震えていた気がした。
それを隠すみたいにわたしを力強く抱きしめる陣平くんが、なんだか愛しくてあいくるしい。
「頼むから、俺の前からいなくならねぇでくれよ…」
陣平くんはそう言うけど、それはわたしのセリフなの。
陣平くんは、わたしの前からいなくなったくせに…
大勢の人を守るために自分自身を犠牲にしたくせに
そう言いかけたけど、口をつぐんだ。
口に出すと、また現実になりそうで怖かったから。
「陣平くんの前から、絶対いなくならないよ」
そう言うと、苦しいぐらいの力で抱きしめていた陣平くんはゆっくりと身体を離してわたしの瞳を見つめた。
「…約束な?」
そう言って小指を差し出してくる陣平くん。
ワイルドな彼が、ちっちゃい子供みたいに見えて可愛く思えた。
「うん。約束」
小指を絡めて2人で顔を見合わせて笑うと、昨日感じた絶望感が和らいでく。