第39章 抱きしめることが出来る奇跡 ☆
もう俺にとっても11月7日はトラウマになりそうだ。
ミコトが萩原みたいに居なくなったら…そればかり考えていたから。
「陣平くん?どうしたの?ずっと後ろ見て」
不自然にミコトの方を見ようとしない俺を不審に思ってか、ミコトが首を傾げた。
そうだよな。こんなふうに顔を背けていると怪しすぎる。
けど、こんな男らしくない顔、ミコトには見られたくねえんだよ。
そんな葛藤の中、俺は咄嗟にミコトの腕を引いて自分の体の中にぎゅっと閉じ込めた。
「じ…んぺいくん?」
突然抱きしめられたミコトは目を丸くして俺の名前を呼んだ。
ミコトに顔を見られたくないという考えからとった行動だが、俺はまた泣きそうになる。
ミコトの華奢な身体から、心臓の鼓動がトクトクと響いて伝わってきたからだ。
「生きてる…」
思わずそんな言葉が口をついて出てきた。
「?生きてるよ?」
そんな間抜けな返事をするミコトを、より一層折れそうなほど強く抱き締めると、胸が苦しくなる。
ミコトはミコトで抱きしめる力が強すぎたのか、小さい声で言った。
「陣平くん…くるしいよ…」
「…俺のほうが苦しいから」
「?なんで?」
「…お前が、生きてて嬉しいんだよ…ばかやろ…」
そう言うと、また一層ミコトを抱きしめる力を強めた。
俺、思ったんだ。
もしもお前がこの世から消えて無くなったら、俺はきっともう生きていけねえ。
仇を取るとか、そんな気力すら湧いてくる気がしねぇんだ…
「頼むから、俺の前からいなくならねぇでくれよ…」
俺らしく無いそんなことを言いながら、ミコトの匂いを目一杯感じていた。
愛しい陽だまりみたいな匂いを
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