第39章 抱きしめることが出来る奇跡 ☆
なんて言葉を返して良いかわからない様子の佐藤に、俺は話を続けた。
「葬式の日、俺はあいつに告った。
もう随分前からミコトの気持ちには気付いてて、自分の気持ちにも気付いてたけど、俺なんかが手出せねぇって踏み込めずにいたんだ。」
「…じゃあ、どうして?」
「事件の数日前に、そのダチに妹をよろしくって真剣な顔して言われたんだ。
その時は、何言ってんだって笑い飛ばしてたけど…
いざ、あいつが死んでボロボロになったミコトを見てると、俺が一生守ってやるって思った。
泣いてる顔なんか見たくなくて、俺が笑わせてやるって思ったんだ」
「…そう。」
「って、俺何話してんだ。
じゃあ、残りの調書まとめ終わったら帰るから」
話していて突然小っ恥ずかしくなった俺は、タバコの火を灰皿で消してベンチから立ち上がった。
そして喫煙所を出て自分のデスクに戻ろうと、ドアに手をかけた瞬間、佐藤が俺の名前を呼ぶ。
「松田くん」
「んー?」
「私も、その事件を一緒に追いたい」
「…」
一瞬、何を言われたのか理解できずに目を見開く俺に、佐藤は俺を真っ直ぐな目で見ながら続けた。
「あなたの親友を殺した犯人を、一緒に捕まえましょう」
「…無理すんなって。実際、もう捜査本部も解散して、あの事件を追ってるのは俺だけだ」
「私は、刑事だから。
刑事として、松田くんの力になりたい。
だから、もっと頼ってよ。
私は…松田くんと…ちゃんとバディになりたい」
そんなことを、恥ずかしげもなく馬鹿みたいに真っ直ぐな目で言われると、逆に俺は笑いが込み上げてくる。
吐き出してしまわないように口に手を当てて笑みをこぼした俺を見て、佐藤は何??と首を傾げた。
「…ふ。アンタ、やっぱ変わってんな」
「ちょ、ちょっと笑わないでよ!大真面目なんだから」
「悪い悪い。っくく…」
笑うのをやめない俺に、痺れを切らしたのか佐藤はもう良いわよ!とプンスカ怒りながら喫煙所を出て行こうとした。