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【R18】evermore 【DC/松田陣平】

第39章 抱きしめることが出来る奇跡 ☆




松田side


取り調べが終わり、送検の準備を整えた時点でもう朝日は登り始めていた。

結果、やはり萩原を死なせた爆弾犯とは別人だと判明した。

そりゃそうだ。
今日の犯人が送ってきた脅迫状とは別に、カウントダウンの数字だけのFAXは例年通り届いていたのだから。

警視庁の喫煙所から朝日を眺めながらタバコを吸い、仕事で疲れた自分の身体を癒す時間。
そんな時間も、隣に萩原がいたときに比べるとしみったれてる。


「お前を殺したクソ野郎は、一体どこにいるんだろうな…萩…」


答えちゃくれないその問いは、タバコの煙と共にゆら…と空に消えていく。

そのとき、喫煙所のドアがガチャリと開いた。


「お疲れ様」

「なに?あんたもタバコ?」

「そんなわけないでしょ?」


中に入ってきたのは佐藤美和子。
タバコなんか吸わねえくせに、わざわざこの煙い喫煙所まで俺を探しにきたらしい。


「…彼女、大丈夫だった?」

「あぁ、ミコトのこと。
問題ねぇよ。夜、ちゃんと家に帰ってる事確認した。」

「だったらいいんだけど…
昨日、結構取り乱してたみたいだったから。
まぁ、あんな事件に巻き込まれたら誰だって…」

「いや。あいつがあんな風になったのは、昨日が11月7日だったからだ」

「…?どういうこと?」


俺の言葉に、佐藤は首を傾げながらベンチの俺の隣に腰を下ろした。


「3年前の11月7日。俺の親友が殉職した。
昨日みたいに、爆弾に巻き込まれて。
…その親友は、ミコトの兄貴なんだ。
だから多分、昨日はそのこと思い出して取り乱してたんだと思う。」

「…そう…なの…」

「あいつ、兄貴のことすげぇ好きだったからさ、死んでから葬式の間もずっと飯も食わねえで泣きっぱなし。
もともとほせぇのに、さらに痩せて大変だったんだぜ?」


そんな風に少しだけ笑いながら話せるようになったのは、3年という時間の流れが悲しみを減らしたからだと思ったが、そうじゃなかった。

悲しみが減ったんじゃない。
萩原のいない世界に、慣れてきたんだ。
平気じゃないのに、平気なふりして過ごしてきた。

だから11月7日の昨日、3年前のあの絶望がフラッシュバックしたんだ。




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