第39章 抱きしめることが出来る奇跡 ☆
そんなわたしに、さっきまでおどけていた陣平くんはすこしだけ真剣なトーンで話し始めた。
「今日の爆弾犯、容疑者が捕まったよ。
今から取り調べだ」
「捕まった…ってことは、お兄ちゃんの事件も…」
「いや。おそらく萩原の事件とは無関係だ。
模倣犯の線が濃厚らしいから。
あまり詳しくは話せねえけど。
…明日の朝には帰るから、家で休んでろよ。」
「ん…気をつけてね…?
まっすぐ家に帰ってきてね?」
「あぁ。じゃあな、おやすみ」
ぷつ…
電話が切れた後、わたしはホッとため息を吐いた。
とりあえず陣平くんは無事みたいだ。
今から取り調べだと言っていたし、きっと朝まで警視庁の中にいるよね…
お兄ちゃんの犯人とは別人だと言っていた。
つまり、来年の11月7日、陣平くんが殉職する運命の日はおそらく過去の通りやってくるんだろう。
あと1年。まだ時間はある。
陣平くんの殉職を阻止するために、事前にできることをやらなくちゃ。
そんなことを考えてはいたけど、陣平くんが電話に出た安心感と今日の疲れが同時に襲ってきて、わたしはゆっくりと眠りに落ちていった。
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