第39章 抱きしめることが出来る奇跡 ☆
自宅に帰ってきたのは、深夜1時。
怒涛の1日で疲れただろうと言われて、明日の実習は休みになった。
藍沢先生は朝から普通に出勤みたい。
タフだ…よくやるよ…
わたしはと言うと、体力的にも精神的にも今日は尋常じゃないぐらい疲れてた。
電気も付けずに倒れ込むようにベッドに転がると、誰もいない部屋が目に入る。
陣平くん…
そう言えば、ちゃんと現場で話せないままだったな…
あんなに心配してくれたのに、わたし…
陣平くんのこと探してる余裕なんて少しもなかった。
きっとこの事件の捜査で忙しいに違いない。
そう考えた時ふと頭によぎる。
もしも、この事件の捜査中に陣平くんが新たな爆発に巻き込まれたら…
そう思うと突然不安が襲ってきて、携帯を握りしめたわたしは陣平くんに着信を飛ばした。
7回目のコールで、受話器が上がった音がした。
「もしもし?どうした?」
「じ、陣平くん…!今どこ?!」
「今?警視庁。」
「っ…良かった…無事なんだね」
陣平くんの声を聞くと、張り詰めていた緊張の糸がぷつっと切れて、身体の力がフッと抜けた。
陣平くんは陣平くんで、自分のことよりもわたしのことを心配してくる。
「俺のことより、お前だろ?
今どこだ?家に帰ったか?」
「うん。わたしは軽症だったからあの場で簡単な聴取取ったら帰してくれた。
今家のベッドで陣平くんがくれたクマ抱いてる」
「フッ…そいつ、なかなか優秀だな。
俺のいない間、そいつ抱いてたらさみしくねぇだろ」
「…さみしいよ…
陣平くん…早く帰って、抱きしめてよ…」
そんなワガママを言うと、わたしの胸がぎゅっと苦しくなって、クマを抱く力を強めた。