第38章 助けたかったのは
そんな時だった。
「大丈夫ですか!!!」
壊れた非常口のドアが開き、レスキューが階段を上がって26階フロアにやってきたのだ。
そしてその中には、陣平くんもいた。
「ミコト!!」
けれどわたしには、陣平くんの声は聞こえなかった。
「目を開けて!!お兄ちゃん!!!」
倒れた男性にそう叫びながら心マを繰り返すわたしの姿を見て、その男性の妹さんも驚いたような顔をした。
わたしが助けたかったのは、この男性じゃない。
わたしの、お兄ちゃんだった。
医者としてあるまじき愚行だ…
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