第38章 助けたかったのは
「おい…!」
誰…?
「おい…!しっかりしろ!」
だれ…
陣平くん……?
「萩原!!!」
「っ…あいざわ…せんせ…」
目を開けて飛び込んできたのは陣平くんではなく、藍沢先生だった。
そうだ。27階の会場まで戻る途中のエレベーター。
26階で止まって扉が開いた瞬間、何かが大爆発を起こした。
大きな音と眩しい光と爆風で身体が飛ばされ、エレベーターの壁に身体を打ち付けてそのまま気絶していたらしい。
爆発の影響でエレベーターは26階で扉を開いたまま止まってる。
慌てて身体を起こそうとすると、頭が少し痛んだ。
「いた…」
「頭を打ってるが、軽症だ。
骨盤も大丈夫そうだな。
他、痛いところはないか?」
「大丈夫です…藍沢先生は?」
「俺も問題ない。
けど…」
わたしの怪我の状態を確認した後、藍沢先生はエレベーターから見える26階フロアに目を向けた。
そこには、大勢の人が爆発に巻き込まれ、動けなくなっている人も見えた。
どうやら爆発は26階のフロアで起こり、わたしと藍沢先生はエレベーターの中にいたおかげで軽症で済んだみたいだ。
う…とうめき声も聞こえ、わたしは慌てて身体を起こし、怪我人がいる方へ向かおうとする。
「治療しないと…」
「あぁ。けど、今俺たちが持ってるのはペンライトと聴診器ぐらいだ。
メスも、麻酔も、輸液も点滴もモニターすらない。
この分じゃ、レスキューや救命医が来るには時間がかかる…どこまでやれるか。」
「でも、助けられる人もいるはずです。」
「…お前は、除細動(AED)探して持ってこい。
俺は先にトリアージしておくから、戻ってきたら手伝ってくれ。
萩原が見て、赤だと判断した場合は俺を呼べ。
黄色判定だが自信がないものも、俺が診る」
「了解です」
藍沢先生に指示され、わたしは急いでAEDを持ってくると、そのあとトリアージを始めた。