第5章 妹なんかじゃない ☆
陣平くんのベッドにぽすっと寝転がると、陣平くんの匂いがした。
ずっとずっと好きなこの匂い。
まだ陣平くんの彼女でもなんでもないくせに、このベッドに寝転がれるのはわたしだけだ。
いや、もしかしたらわたしがいない時にちゃっかり女の子を連れ込んでたりして。
そう考えると嫉妬心がメラメラと湧き上がる。
やだ!陣平くんはわたしのだもん!!
そんな風に心の中で叫びながら枕に顔を埋めてバタバタと足をばたつかせて暴れていると、呆れた様子の陣平くんの声がした。
「なにやってんだコラ。
ベッド壊れるだろ」
「こ、壊れないよ!そんなに重くないし!
それに、今日は一緒に寝るんでしょ?」
まるで当たり前みたいにそう言うわたしを見て、陣平くんは目を見開いて一瞬固まった。
「バッッッッカじゃねぇ!?」
いきなり大きい声を出されてビクッと肩を震わせたわたしは、驚いて陣平くんを見た。
「バカだろ?!何言ってんだよ!
俺は今日雑魚寝!」
「え…なんで?
だって、お兄ちゃんとは一緒のベッドで寝たよ?」
そう言うわたしに、陣平くんは少しだけ声を荒げながら言う。
「俺はお前の兄ちゃんじゃねぇ!」
「え…」
だって、わたしのこと、妹みたいだって何度も言ったじゃない。
そんなことを考えているのが顔に出ていたんだと思う。
陣平くんはハッとわたしを見て目を逸らして言った。
「…いや。…わかった。
一緒に寝よう。同じベッドで」
まるで、手を出さないことを証明したいと言ってるかのように、陣平くんは突然了承してくる。