第38章 助けたかったのは
コールが7回目に差し掛かろうとしたとき、一課の執務室に警察無線のアラートが鳴り響いた。
「至急至急。ただいま、東京国際タワービルの26階で大規模な爆発があったとのこと。
死傷者は不明。直ちに現場に急行せよ。
繰り返す…」
嘘…だろ…
ドクン…と俺の心臓が嫌な音を立てた。
萩原と同じ日に、まさかミコトが…
その場に立ち尽くす俺に、佐藤が腕を引きながら言う。
「行きましょう、松田くん。」
「…」
「松田くん…松田くん!!!」
「ミコト…」
佐藤が俺を呼ぶ声は頭に入ってこず呆然とする俺に、佐藤は両肩をガシッと掴んで再度大きな声を出した。
「しっかりしなさい!
ここに居ても、ミコトさんが無事かはわからないわ。
現場に向かいましょう。
…大丈夫よ。講演会は16時まで。きっともう会場を出ているわ」
「…あぁ」
佐藤に叱咤され、警視庁を出た俺は、佐藤の車の助手席に乗り込んだ。
そうだ。
ミコトが巻き込まれるはずねえ。
だって、今日の夜、一緒に飯を食おうと約束してるんだ。
あいつが、死ぬはずねえ…
何度もそう思いながら、東京国際タワービルへと急行した。
けど、同時に思った。
萩原が死んだ時も、これが終わったらいつもの店でやろうぜって話してたんだ…
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